映画『PERFECT DAYS』を観て



「豊かさ」とはなんだろうと考える。
お金が有り余るほどあることだろうか。はたまたたくさんの高級品が買えることだろうか。

役所広司さん演じる主人公の平山は、東京都渋谷区のトイレ清掃員として働いている。
毎朝同じ時間に目覚め、身支度をして、仕事へ向かう。
この繰り返されるなんでもない日常が映画のひとつの軸となっているのだが、不思議と同じ日は存在しない。
それはきっと、彼が日常の静かな機微を見逃さないからなのだと思う。
木漏れ日や水面に反射する光、天井にゆらめく人の影…こうした小さな景色に目を細めて見つめる平山の姿に、わたし自身も経験があるので思わず嬉しくなった。

トイレの清掃員と聞くと「豊かさ」という部分では無縁のようにも感じてしまうが、映画のなかの彼には決して物質では補えないこころの豊かさがあった。現代では置き去りにしてしまいがちな人間らしい生活がそこにはあって、こころを亡くしてしまいそうになったときに見直したい作品。

作中では平山が銭湯へ行くシーンが何回か出てくるのだが、頭や体を洗うときや湯に浸かるときの役所さんの演技が本当に気持ちよさそうで、お風呂に入りたくなるような映画でもあった。

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