3月4日(月)
仕事の帰り道、同僚と昨日のひな祭りは何を食べたかの話になる。
彼女は唐揚げを食べてしまったと言った。
一方でわたしは何を食べただろうかと思い出そうとする。
そうだ、ナンを食べたんだった。
ひな祭りだったその日、お昼はどうしようかと考えながら、地元の野菜が売られているような道の駅のようなところをぶらぶらとしていた。お惣菜コーナーにインドカレーと並んで、ナンが単品で売られているのを発見する。
ナン1個の大きさが結構大きいので存在感があり、それがドサっと山盛りに積まれているのでそこだけちょっと異様な空気を放っていた。
販売元はどうやら近くのインドカレー屋さんみたいだ。
あまり見ない光景に思わず目を奪われてしまい、しばらく見つめているとだんだんとカレーの気分になってきて、気がついたらナンを抱えてレジへ向かっていた。
ナンを食べたことを同僚に話すと、お互い全然ひな祭りっぽくないですねと言い合って、食べられなかった(食べなかった)ちらし寿司にふたりで思いを馳せた。
3月7日(木)
通勤途中、少し前を散歩に連れられている柴犬が歩いていた。
わたしは実家で犬を飼っているけれどなかなか会えないので、こうして街中で見かける犬たちにいつも癒しをもらっている。
彼らを追い抜くタイミングで、柴犬の方がチラリとわたしを見たので、嬉しくなって不自然にならない程度に微笑んでみた。
するとその柴犬が急に立ち止まる。
警戒されてしまったのかもしれない。
3月8日(金)
大学でサークルが同じだった友人に会おうという誘いのLINEを送った。
久しぶりに開いたトーク画面では、最後に会ったときの写真を送り合い、「また会おうね!」という会話で終わっていた。
もう3年も前のことだ。
そんなに月日が経っているとは思わなかったので、少し驚く。
誘ってみたのはいいものの、相手からの返事が来るまでのこの時間はとてつもなく長く感じる。
迷惑でなかったかとか、会いたいと思っているのはわたしだけなんじゃないかとか。
考えたところで答えは出ないのに、そんな考えが頭のなかでぐるぐるとループする。
『誘った勇気までがわたしのもので、返信の有無まで知らんがな』
ドラマ『僕の姉ちゃん』で姉ちゃんが言っていたセリフ。
この心持ちで友人からの返信を待つ。
3月9日(土)
フィルムカメラを買った。
昔製造されていたものではなく、去年の9月ごろに発売されたKODAK EKTAR H35Nという機種。
値段もわりと手軽で、体感的には使い捨てカメラの写ルンですよりも”ちょっといい”ハーフカメラである。
値段や機能などはあくまでも後付けの理由。
なによりも昔のカメラのようなレトロな可愛い見た目にときめいてしまって、購入を決めた訳はほぼこの理由である。
久しぶりにわくわくするような買い物ができて嬉しくなった。
3月10日(日)
干し芋ブームに引きつづき、抹茶ブームも来ている今日この頃。
たまにちょっとした広めの公園や美術館にある茶室を見かけると、積極的に入るようになった。
全くの未経験ながらも家でも飲めたらいいなと思うようになったので、お茶を点てるときに必要な道具を調べるようにもなった。
そういえば抹茶を市販で見かけることがないなとふと思う。
缶コーヒーのように本格的な抹茶も手軽に飲めるようになればいいのにな、とブームが来ている身から思った。
3月16日(土)
出先の帰りについでにと思い、刃物屋さんへ向かう。
目的は「爪切り」である。
実家では10年ほど前からこの刃物屋さんの爪切りを愛用していたので、実家を離れてわりとすぐに買いに走ったのだが、なんとそれを無くしてしまった。
それほど広くない家のはずなのに、一体どこへいってしまったのか。
全く出てくる気配がないので、仕方なく再び購入することにした。
実家ではふつうのサイズを使っていたのだが、ここ最近はこの爪切りが人気になっているらしく、このサイズが売り切れになってしまっていることが多い。
前回店頭で購入したときもこのサイズが売り切れていて、ふつうのサイズよりもひとまわり小さい携帯用サイズを購入した。
お店に着いて店内を覗くと、ふつうのサイズはやっぱり売り切れていた。
今度は小さいサイズではなく、ふつうのサイズよりもふたまわりほど大きいものが並んでいた。
しばらく購入するか悩んだが「せっかく来たし」と小さいサイズを購入したときと同じ理由で買って帰った。
3月20日(水・祝)
スーパーで買い物をしてお会計をする。
「1,717円です」
わたしはレジの女の子にクレジットカードを差し出す。
すると女の子が「いちなないちななっ」と呟くように言ってタブレットを操作する。
「カードをお預かりします」
また「いちなないちななっ」と言って、今度は別の機械を操作する。
機械からレシートが出る。
レシートを確認しながら「いちなないちななっ」。
「レシートとカードのお返しでございます」
その女の子の胸元には「研修中」のバッチがついていた。
大事に確認された商品たちを持ってそのスーパーをあとにした。
3月24日(日)
車に乗っているときに運転をしていた知人が突然、
「あれは絶対に双子だ!」
と言った。
どうやら前の道路脇を走る2台の自転車のことらしい。
なぜ後ろ姿だけでそんなことが分かるのだろうと不思議になって見てみると、そのふたりの動きが見事にシンクロしていたのである。
ペダルを交互に踏む足やそれに合わせて揺れる体…全てのリズムが見ていて心地いいくらいにぴったりだっった。
よく見てみるとコートやバッグ、パンツも色違いのおそろいだ。
「このふたりは双子に間違いない」とわたしも確信し、追い抜くときにそっとお顔を拝見してみると、確かに同じ顔をした男の子たちであった。
この世に自分と同じ顔がもう一人いて、趣味や嗜好も似ている人間がいる感覚とはどんなものだろうか。
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