日記は1日のことをまるまる書こうとせずに5秒のことを200字かけて書くと書きやすい。5秒もあれば物理も心理もそれなりに働く。何ごとかが輪郭をもった姿で目の前にあらわれる。
『5秒日記|北欧暮らしの道具店』古賀及子
北欧暮らしの道具店で連載されているライター・エッセイストの古賀及子(こが・ちかこ)さんの『5秒日記』というエッセイ。
わたしは遅ればせながらこの連載ではじめて古賀さんを知ったのだが、日常のなかでも見逃してしまいそうなほど小さな一瞬を200文字で丁寧に切り出していて、読んでいて思わずふふふっと笑ってしまうようなユーモアがたくさんちりばめられた文章だった。読み終わったあとは不思議とあたたかな気持ちになり、自分のなかの小さな日常をいつもよりもちょっと愛おしく思えるような、そんな気持ちにさせてもらえるエッセイ。
その古賀さんの文章に見事に感化されたわたしは、僭越ながらここで「5秒日記」に倣ったものをはじめたいと思っている。
シリーズタイトルは『暮らしのひとすくい』とした。
この「ひとすくい」というのは、ティースプーンで「すくう」よりは水面の水を両手で包み込むイメージに近い。暮らしのなかの小さな出来事の一瞬をちょっと丁寧に記録しておきたいのだ。
まずは1週間分を週に1回まとめて更新できるようにしたい。
拙い文章かと思いますが、もしみてくださる方がいるのであれば、あたたかい目で見守ってもらえるとうれしいです。
12月1日(金)
携帯のアラーム音で目が覚める。
頭の上のベッドの縁に手をかけて軽いストレッチする。無理矢理にでも自分を目覚めさせる作戦だ。
しかし、布団から腕を出したせいで腕はすっかり冷えてしまい、だめだと思いつつも寒くなって再び布団に潜ってしまう。
ぬくぬくとしたあたたかい布団に包まれ、意識が朦朧とするなか、夏の二度寝事件を思い出していた。
夏は基本的に暑すぎて二度寝などできないのだが、暑すぎた故、クーラーをつけた快適な部屋で二度寝をしてしまったことがあった。
あのときの焦った記憶が蘇り、途端にパッと目が覚める。時計を見ると最初のアラームから3分しか経っていなかった。優秀。
12月2日(土)
目の前には、自分の履いている靴と枯れ葉と土ばかりが目に入る。
沢山の人と殺伐とした雰囲気の東京に疲れを感じ、自然を求めてわざわざ山へ来たはずなのに、気がつけば自分の足元しか見ていなかった。慌てて周りを見渡してみる。
すると道中の看板が目に入り、そこには堂々と『ハイキングコース』と書かれていた。
個人の体感角度でいうと75度くらいはありそうな山道をこんなにも登り下りするコースが果たしてただの『ハイキングコース』なのか…
一緒に登っていた人と「はじめは登りだけがきついと思っていたけど、結局は下るのもつらい。平地が最高。」というので意見が一致した。
そういえば、最近の年末セールで石のような突起物がいくつもついた足ツボマットを購入した。お風呂から出たあとの髪を乾かしている間だけ乗るようにしているのだが、そこから降りたあとの足裏の安心感がすごい。平地って最高だ!
12月3日(日)
朝起きると、案の定、昨日の山登りで筋肉痛になっていた。太ももとお尻が痛い。
日頃、運動だけの時間を取ることが難しいので、駅では必ず階段を使うようにしたり、駅から会社までの往復30分を歩くようにしたりと、せめてもの気持ちで生活の中に運動を取り入れようとはしていた。
山登りをするにあたり、このレベルの運動では到底及ばないことはもちろんわかってはいたが、こんなにも筋肉痛になるとは。
山ではすれ違う人と挨拶をする。そのなかには、おじいちゃんもおばあちゃんも大勢いた。
今辿ってきた同じコースをあの年齢の方々が?!と驚くことが多く、あの年齢になっても山登りができるように今から足腰を鍛えておきたいなあと、筋肉の痛みを感じながら思った。
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