【暮らしのひとすくい】ふたりで話し込んだ深夜のリビングを思い出す(2023.12.04〜12.10)




12月4日(月)

腰がすこし痛んだので、腰骨あたりにカイロを貼った。しばらくして腰あたりがじんわりとあたたかくなる。
仕事をしているとき手足が冷えてきたので、足元に置いてある温風の出るヒーターをつけた。すぐに足元があたたかくなる。
「あたたかい」が幸せに感じる季節がきたんだなあとぼんやりと考える。

これの最上級の幸せは、雪が降る寒い日にあたたかくした室内でアイスを食べることだと思っている。


12月5日(火)

今日はどうしても着たい上着があった。すこしくすんだ色をした水色のダウン。
朝決めた服装に、「これには絶対あの上着が着たい!」といそうケースの引き出しから引っ張り出す。問題はここから。
小さく丸められ、専用の袋に押し込められたダウンを引っ張り出すと、見事なまでにしわっしわなダウンが出来上がっていた。
1日ハンガーにかけておけば元通りのふっくらとした、ダウンらしいダウンになるのだが、今日はどうしてもこれを着ていきたい気分になってしまったので、そこまで待てない。果たしてこのしわしわ具合は許容範囲なのか。家を出なくてはいけない時間が迫っているというのに鏡としばし睨めっこ。
母と暮らしていたときは、よく「変じゃない?」と食い気味に訊いていたことを思い出す。こうなったら脳内に母を召喚させるしかない。そうして悩んだ挙句、結局しわしわのダウンを会社に着てきてしまった。帰るころにはふわふわのダウンに戻っていますようにと願いながら、ハンガーにかけた。


12月6日(水)

デスクワークでずっと座っていると腰が痛くなるので、寝る前に何かしらのストレッチをするようにしている。YouTubeのお気に入りのヨガ動画があるのだが、それをやり始めると20分ほどかかってしまうので、ここ最近はなんとなく面倒になり、我流のストレッチを適当にやっていた。
しかしそれだと疲れがいまいち取れない気がして、久しぶりに動画を再生しながら身体を伸ばした。すると動画が終わるころにはすっかり身体がほぐれているのである。プロの技はすごいと改めて実感し、この情報に無料でアクセスできる現代にも感謝して眠りについた。


12月7日(木)

新しく買ったリップが似合っていないような気がする。
鏡の前でそう思い、いつもつけているリップに塗り直す。

つけていると顔色がパッと明るくなるような気がして気に入っていた別のリップがあったのだが、気がついたら廃盤になっていて、メーカーからはその後も後継品は出ていない。
それからというもの、しっくりとくるリップが見つからず、迷走状態のまま、現在に至る。
今、塗り直したリップも購入してすぐのときはなんだかしっくりとこなかったのだ。

そう思うと、自分のなかの「似合う」「似合わない」の判断というのは、「見慣れている」「見慣れていない」に近いのではないだろうか。
はじめは似合わないと思っていても、ずっと身につけていればそのうち自分に馴染んでくるのかもしれない。


12月8日(金)

朝いつもの電車に乗る前、音楽を聴こうとイヤホンを耳に装着する。いつも通り自動で携帯に接続される。音楽を流そうと携帯を探すが、その肝心な携帯本体が鞄のどこを探しても見つからない。予定がなければ携帯がなくても平気な質なのだが、今日は予定がある。これは家に忘れたかと焦る気持ちがありつつも、電車が来てしまったのでそのまま乗り込んだ。イヤホンはまだ接続されたままである。荷物も多い今日は、鞄のなかはまるで四次元ポケットのよう。必要なものが必要なときに全く出てこない。

ふと腕にスマートウォッチを着けていることを思い出し、確認すると、どうやらこちらも正常に接続されている模様。1駅、2駅と自宅から遠ざかっても異常はないらしく、接続されているマークがずっとついている。

もしかしたらこれは鞄のどこかにはあるのかもしれないと淡い期待を抱きつつ、会社へ向かう。イヤホンはしているが、音楽は何も流れていない。

会社へついて早速荷物を確認してみると、いつもは使っていないポケットの奥底に携帯が入っていた。機器たちの見事な連携により、無駄に自宅に戻らずに済んだ。


12月9日(土)

「ほら、わたしって根は暗いから」

姉と夜ごはんを食べに行った。この日のメニューはタコス。個人的にタコスのブームが来ている。

私と3つ歳の離れている姉は、結婚をしていて離れて暮らしているので、こうして会うのは久しぶりだ。
他人に姉のことを説明するときは「わたしとは正反対に社交的で、賑やかな人。昔からふたりでいても姉妹と思われないくらい顔が似ていないんです」ということが多かった。

たしかに顔は似ていないのだが、姉のそのひと言にすこしハッとして、話さないうちに自分のなかの姉のイメージまで塗り変わってしまっていたのだと気がつく。

そういえばそうだった。
姉は一見派手そうに見えるところがあるのだが、内面はそういうところがあるのだ。
いっしょに暮らしていた頃、両親が眠ったあとの深夜のリビングで、よくふたりで話し込んでいたことをふと思い出す。
今日だって、ちょっとマイナーだと思われるタコスに姉もちょうどハマっているのだと聞いて驚いたくらい。

顔は似ていないけれど、意外と思考や趣味は似ているところがあったんだった。
会わないうちにいつの間にかそのことを忘れてしまっていて、言葉のイメージだけがわたしのなかに残ってしまっていたのだなと思った出来事。

姉のお気に入りのタコスのお店があるそうなので、今度また行く約束をした。


12月10日(日)

最近語学を勉強することにハマっている。
英語をはじめ、いつか行きたいと思っているフィンランド語と、もうすこしメジャーな(フィンランド語と比較して)言語も学びたくなったのでフランス語も直近で始めてみた。

わたしの場合、語学を勉強していると気持ちがちょっと日本から離れられる気がして、それがいい気分転換になる。

英語の勉強という名目で大すきなシリーズものの映画を観た。魔法をテーマにしたイギリスのファンタジー映画。
そのなかで登場人物たちが言っていた「Brilliant!」という言葉が耳に入った。日本語にすると「最高!」というときなどに使う褒め言葉らしい。
意味も相まって言葉自体が光を放っているような素敵な言葉だと思った。

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